「スパインに限界はない」オーディオビジュアルデザインの限界に挑戦した、英国王立内科医協会の北部の新拠点
英国王立内科医協会の新拠点「スパイン」は巨大な建造物であり、多数のフロアとバイオフィリックなインテリア、柔軟な活用を考慮した部屋で設計されている。そのため、建造物全体でネットワーク利用できるAV機器を接続する上でのロジスティクス、プロジェクト計画、物理面での取り扱いが課題でした。
スパインの技術システムは、広範囲にわたるネットワークと構造化されたケーブル配線を活用した設計となっています。また、主要なオーディオトランスポートとしてDanteを採用することで、必要なソリューションの連携を簡略化しました。その結果、Sennheiserの事業ポートフォリオにおいて基盤となる製品が、完璧にマッチすることが実証されました。
英国王立内科医協会(RCP)は、新拠点にリヴァプールの13階建ての壮麗な建造物「スパイン」を選びました。英国北部を拠点に活動するスタッフのため、RCPはスパインの主要テナントとして7フロアを改装し、新たなオフィススペース、教育スペース、イベントや会議向けのダイナミックなスペース(Spaces at The Spine)を構築しました。Sennheiserは、プロジェクトパートナーとともに建造物全体のモダンなスペースに最先端のテクノロジーを導入しました。スパインは、最新のネットワーク対応AV機器が利用者にとってどれほど有益かを示す、素晴らしい事例となっています。
公衆衛生の専門組織であるRCPは、北部の新拠点にスパインを選択しました。「世界で最も健康的な建造物」のひとつとされるスパインは、人体からインスピレーションを得てデザインされています。英語で「脊椎」を意味するスパインという名前は、建造物の北側にある幾何学的な階段が人の脊椎を連想させることに由来しています。RCPは、世界最高水準の建造物であるスパインに、試験や教育、対面での会議、バーチャル会議、ハイブリッドな会議やミーティングのための空間に加えて、公共カフェ、展示スペース、ネットワーキングエリアも備えた7フロアを整備しました。スパインのユニークなレイアウトにはバイオフィリックな要素も取り入れられており、建造物全体に自然との強い結びつきが生まれています。スパインは、WELL Building Standard®の戦略と理念に基づいて設計・建設されました。WELL Building Standard®は、建物、内部空間、コミュニティにおける人々の健康とウェルネスをサポートする機能の導入・検証・測定に関する最高クラスの基準で、WELL Platinumの達成を目標としています。
医療従事者が教育のための空間で信頼を寄せるオーディオ専門家、Sennheiser
RCPは、スパインでのプロジェクト以前から、グレードIで登録されたロンドンの施設などで、SennheiserのSpeechLine Digital Wirelessや天井マイクロフォンのTeamConnect Ceiling 2を使用してきました。RCPは、英国北部の新拠点となったリヴァプールのスパインで、Sennheiserのポートフォリオを標準として導入し、Sennheiserのソフトウェア「Control Cockpit」と「MobileConnect」を両方活用したいと考えていました。RCPにとって、マルチチャンネルレシーバーのSpeechLine Digital Wirelessを使用するのはこれが初めてでした。
RCPは、 Recursive Digitalに依頼し、スパインにとって最適なグレードの最先端技術を導入するという観点から、AVシステムの設計を最終決定し、必要な製品を指定しました。Recursive Digitalのシニアテクノロジーコンサルタントのポール・マーシャル氏は、英国Sennheiserにおけるプロフェッショナルオーディオソリューションのチャンネルセールスマネージャーであるイネッシュ・パテルと緊密に連携し、プロジェクトに適したSennheiserの製品を最終決定して、2020年春に向けてRecursive Digitalの入札書を作成しました。
RCPがすでに使用していたSennheiser製品に満足していたこともあり、Recursive Digitalのマーシャル氏もシステムデザインにSennheiserのソリューションを採用することには積極的でした。「私たちはRCPの既存の製品ポートフォリオを理解することに力を入れました。SennheiserはRecursive Digitalとしてもこれまで関係を構築してきた相手ですし、RCPにとっても長年のパートナーだったため、理にかなった選択でした。中でも、TeamConnect Ceiling 2、MobileConnect、Dante対応ワイヤレスマイクロフォンシステムのSpeechLine Digital Wirelessについては、スパインにとっての最適解であり、デザイン面で選択された他のメーカーともシームレスに統合できることはすぐに分かりました。決め手となったのは、RCPがSennheiser製品を使っており、理解していること、そしてSennheiserのサポートや製品がプロジェクトの要件を満たしていたことでした」とマーシャル氏は言います。
スパインのプロジェクトでのRCPの入札は、2020年夏に英国のインテグレーター数社に向けて公開され、Pure AV が指名されました。「RCPやRecursive Digitalとともに優れたテクノロジーを多用するプロジェクトに取り組めたのは、非常にエキサイティングな経験でした。AV機器のデザインの限界に挑戦し、新たな技術を導入し、メーカーと緊密に連携して新たに開発された最先端の製品やソリューションに取り組むことで、Pure AVのチームは持てる力を存分に発揮できました。スパインの素晴らしいプロジェクトに参加していることを誇りに思っています。今後何年にもわたって、リヴァプールの街のデザインとテクノロジーにとって道標のような存在であり続けるでしょう」とPure AVのグループセールスマネージャー、エイダン・クロウ氏は言います。
導入は2020年11月に開始し、2021年7月末に完了しました。新型コロナウイルスの感染拡大という逆風にもかかわらず、スパインは段階的なオープンを迎えることができました。
AVデザインの限界を押し広げる
スパインにおける課題は、さまざまなスペースや利用目的があるなかで、画期的な設計の建造物内に、AV機器をうまく、効率的に設置することでした。AVシステムは、すべてのフロア、エリア、スペースで連動させる必要があるため、ネットワークインフラが重視されました。「早い段階から、RCPのITおよびネットワークチームと緊密に連携することが不可欠でした。また、作業をコントロールして成功に導く上で、ネットワークの仕様変更がAVシステムにどのような影響を与えるかを理解することが大切でした」とクロウ氏は振り返ります。
各種テクノロジーとハードウェアは、すべてのエリアにおいてインテリアデザインと内装に調和するように導入されました。スパインのデザインで重視されたバイオフィリックな雰囲気を保ちつつ、技術を効果的かつ使いやすい形で導入することが不可欠でした。「この課題をクリアする上で、AVシステムを早期から検討し、初期構想から最終的な導入、試運転に至るまで、求める技術を明確化できたことが成功の要因となりました」とクロウ氏は述べています。
Sennheiserのビジネスコミュニケーションポートフォリオが、スパインにおける柔軟性を再定義
会議室、教育や医療検査のためのスペース、ハイブリッド学習用の教室、ライブストリーミングおよびハイエンドの会議スペースまで、種類も広さも多岐にわたる部屋が多数あったため、柔軟なソリューションが必須でした。ネットワーク化されたマイクロフォンシステムの導入を成功させる上で、クロウ氏は、Sennheiser製品の選択とAVデザインへの早期導入が鍵になったと指摘しています。音声を増幅したり配信したりする必要がある小さなスペースでは、ユーザーにとって導入時の摩擦が少なくなるように、実証済みの使い慣れた製品であるMME-865デジタルシステム等が採用されました。より大きなスペースでは、建造物全体にわたってかなりの数のTeamConnect Ceiling 2が導入され、最適なリスニングソリューションとしてMobileConnectが選択されました。
柔軟で構成しやすいTeamConnect Ceiling 2
スパイン内の各スペースの用途や利用者が多岐にわたるなか、RCPが共通の哲学として奨励しているのが、利用者のエンゲージメントと自由なアイデアの交換です。TeamConnect Ceiling 2および搭載されている特許取得済みの自動ダイナミックビームフォーミング技術は、これらの条件を完全に満たしています。「形状やサイズの異なる部屋で使用でき、施設全体に設置可能で、RCPの求める性能と構成しやすさを両方するような、高度な天井マイクロフォンを必要としていました。TeamConnect Ceiling 2は、この課題に対する完璧な回答でした」とマーシャル氏は言います。
部屋の柔軟な設計に適合する支援型リスニングソリューション、MobileConnect
スパインには多数の部屋があり、その多くが分割可能となっています。そのため、RCPは最新型および従来型のさまざまな補聴器に対応した、柔軟な聴覚補助ソリューションを必要としていました。MobileConnectとそのネットワークアーキテクチャおよびスマートフォンインターフェースを活用することで、RCPは職員および利用者の双方にとって包括的かつ柔軟なソリューションを提供できるようになりました。また、特にアクセスが必要なフロアが高層階にある場合に、MobileConnectを使うことで、従来のオーディオ周波数誘導ループ(AFIL)システムよりも簡単にさまざまな種類のイベントに対応できるようになりました。
医療に関する計画を立案する立場であり、影響力も大きいRCPにとって、聴覚補助は重大なテーマです。「MobileConnectは、聴覚補助に関する最新技術や独自の柔軟性を備えており、スパインにとっても、未来を見据え、500年の歴史を持つRCPにとっても、ふさわしい選択でした」とマーシャル氏は語ります。
Microsoft Teamsの中規模な会議室向けに最適化されたオーディオソリューション、TeamConnect Intelligent Speaker
スパインのハブスペースでは、Microsoft Teamsの通話に使われる小規模な会議室に、Spaces at The SpineチームがTeamConnect Intelligent(TC ISP)を導入しました。TC ISPは、音声コマンドを理解し、シームレスに応答します。この分野でよく知られているMicrosoftのサービス、Microsoft Cortanaの音声インテリジェンスを活用することで、ビデオ会議やチーム会議で、ユーザーがマイクロフォンを口頭で制御できるようになっています。「TC ISPでは非常に良い結果が得られました。小規模な会議室におけるカバレッジが非常に良く、音声品質も優秀です。Microsoft Teamsの通話にTC ISPを使用できることを嬉しく思います」とスパインのオーディオビジュアル運用マネージャー、アドリアン・プリジョン氏は言います。
SennheiserとQ-SYSの完全な相互運用性
SennheiserとQ-SYSは、戦略的パートナーとして、スパインの事例よりも以前から、価値の高い会議室や教育スペースに関する認証されたソリューションを提供し、多数の共同プロジェクトで提携することで、優れたユーザー体験を実現してきました。スパインの多くのエリアで、TCC 2は、参加者(プレゼンターと聴衆)を追跡するQ-SYSカメラシステムと組み合わせて使われました。TCC2とQ-SYS制御ソリューションの相互作用により、高い信頼性と効果的なユーザー体験が保証されます。スパインは、可能な限りAV設備全体でネットワーク制御と保守メンテナンスをサポートする必要がありました。そのため、Sennheiser Control CockpitをQ-SYSエコシステムに統合して導入することの重要性が高くなっていました。「Pure AVのプログラミングチームとプロジェクト実装チームにとって、SennheiserおよびQ-SYSと密接かつ直接協力して互換性を確保し、必要なソフトウェアを微調整できたことは大きな成果でした」とクロウ氏は述べています。RCPの教育担当アソシエイトディレクターのジャネット・レゲット・ジョーンズ氏は、真の意味での相互運用性がもたらす効果に驚いたと言います。「SennheiserのマイクロフォンとQ-SYSのネットワークシステムは、オンデマンドで聴くユーザーにシームレスな体験をもたらすハイブリッドな環境を構築しています。本当に部屋にいるような感覚が味わえるのです。まさに、空間を超えた真の教育コミュニティと呼べる体験です。」
持続可能なコラボレーションを実現する、SennheiserとRCP
RCPのAVリソース責任者であるベン・ペイン氏は、スパインにおけるSennheiser製品の導入に非常に満足しており、これからも長年にわたって関係を築いていきたいと述べています。「私たちはこれまでもロンドンの施設で長年にわたってSennheiser製品を利用しており、SpeechLineおよびTeamConnectシリーズの品質の高さを知っていました。だからこそ、スパインのような世界最高水準の多目的な空間で求められる柔軟かつ高品質なオーディオを提供できるサプライヤーを探していたとき、Sennheiserであれば要求を満たせると確信していました。近日中に、ロンドンの施設にもMobileConnectを導入予定です。企業が提供するのは製品だけでなく、付随するサービスやサポートも重要です。Sennheiserの顧客サービスを大切にする姿勢と、デザインや問題解決に対する協力的なアプローチには、いつも感心させられます。スパインでの提携を通じて、その思いはさらに強くなりました」とペイン氏は言います。
この素晴らしいプロジェクトを通じて、我々チームだけでなく、関係者の誰もが大きな刺激を受けています。以下の記事を、ぜひご確認ください。
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このプロジェクトで使われているSennheiser製品の詳細: