オランダ国立劇団

ハーグ、オランダ

バラエティ豊富な舞台を公演する劇団を支える最新の音響技術

オランダ国立劇団(Het Nationale Theater:HNT)は、オランダ国内最大規模を誇る、国内の主要都市を巡回公演する劇団のひとつです。サウンド・エンジニアのイーヴォ・パス(Ivo Pas)氏とロバート・ヴァイネン(Robbert Weinen)氏に、デジタル・ワイヤレス・オーディオのメリットとポストコロナの計画について話していただきました。

「『SK 6212』は、午前中のリハーサルから、夜11時に公演が終わるまでバッテリーを交換することなく使用できます。これは単純にすごいことで、おかげで時間をかなり節約できています」

- イーヴォ・パス、シニア・サウンド・エンジニア -

イーヴォ・パス氏はお会いしてすぐに「オランダの劇団は海外の劇団とは違います」と話してくださいました。HNTでシニア・サウンド・エンジニアを務めるイーヴォ氏は、「オランダには独立採算性の民営、もしくは市営の劇場が多数点 在し、各劇団は国立劇場よりも、その民営・市営の劇場で公演を開催しているこ とが多い。国立劇場で開催される舞台は全体の10%程度しかない」と言います。事実HNTは「オランダ国立劇場(Koninklijke Schouwburg、以下写真参照)」で公演を行うことにこだわってはいないそうです。ハーグの中心に位置するこの美しい劇場が建設されたのは1766年。元々シティパレス(宮殿)として建設されたこの建物は、1804年に劇場としてオープンしました。

  • Customer オランダ国立劇団
  • Website https://www.hnt.nl/
  • Country オランダ
  • Industry 演劇・舞台

国内にある200近くの劇場のうち50劇場で公演を行うHNT

HNTは国内を巡回しているため、ハーグで上演されている舞台を約50都市で観劇できます。オランダは非常に小さい国に思われますが、HNTが公演している劇場は、国内にある200近くの劇場のわずか4分の1程度にすぎません。HNTはオランダ国立劇場で上演をスタートし、その後オランダ国内を巡回し公演を行います。5人のオーディオ・エンジニアで構成されるチームが、年間300回以上上演される舞台をサポートしています。イーヴォ・パス氏と同僚のロバート・ヴァイネン氏は、主にツアー部門に従事しており、担当のサウンド・デザイナーと密に連携し、舞台本番とリハーサルの準備を行っています。ゼンハイザーが行った今回のインタビューの中で、2人は共に時間を過ごせることをとても喜んでいました。2014年にHNTに就職した2人は、ツアー回数が多いため、普段あまり会う機会がないと言います。各劇場でHNTが利用するのは、劇場専任のPAのみで、高性能ワイヤレス設備など他の設備はすべてHNTのチームが準備します。

Digital 6000を使用するオランダの劇団HNT

現在HKTのツアー部門では、20チャンネルのDigital 6000とミニボディパックトランスミッターSK 6212が使用されています。HNTに入る前、ステージ・エンターテインメント・ネザーランド(Stage Entertainment Netherlands)で働いていた経歴を持つロバート・ヴァイネン氏は次のように話します。「SK 6212は役者にとても好評です。以前使用していたトランスミッターSK 5212はかなり小さいものでしたが、今ではどの役者もSK 5212を『あの大きいトランスミッター』と言います。役者は舞台の上を動き回りますが、以前のボディパックは役者のぴったりとした衣裳の中に隠してあるのがはっきりとわかりました。SK 6212に切り替えてからは、ボディパックが見えてしまう問題が解消されました」。イーヴォ・パス氏もまたDigital 6000と小さなボディパックトランスミッターを気に入っている一人です。2014年にHNTに入る前はフリーランサーとして多くの経験を積んだイーヴォ・パス氏は「最近では5時間以上の舞台もあります。観客のために2回休憩を挟むそういった長時間の舞台を私たちは『マラソンショー』と呼んでいます。SK 6212は、午前中のリハーサルから、夜11時に公演が終わるまでバッテリーを交換することなく使用できます。これは単純にすごいことで、おかげで時間をかなり節約できています」と言います。

さらにロバート氏は「役者を煩わせることがなくなったのも大きなメリットです」と指摘します。脱いだりめくったりする必要がなくなり、衣装を一日中着ていられるようになりました。さらにDigital 6000の狭い周波数は、HNTのチームがあらゆる場所に対応するために役立っています。「ツアー先の劇場には多くの場合、ホールが2~3つあるため、同じ建物内で行われている他の舞台で使用されているワイヤレスボディパックからの音声がたくさん『飛んでいる』ことがあります」

HNTはオランダ最大規模の劇団のひとつで、その運営費のほとんどが公費で支えられています。コロナの感染が拡大している中で劇団は、ポッドキャストや舞台の配信などクリエイティブな新しいサービスで事業を続けてきました。2020年に予定されていた多くの公演の日程が変更され、年内に初演が予定されています。

2人のエンジニアは、雇用主がバラエティに富んだ公演を提供していることをとても誇りに思っています。イーヴォ氏はインタビューの最後にこう話してくださいました。「リハーサルからツアーの最終日までは長くても4カ月程度です。私たちは他の劇団のように、何年も同じ舞台を上演することはありません。そして、常に新たな舞台に挑戦することを私たちは楽しんでいるのです」。イーヴォ氏が前回関わった舞台『ヘブリアナ(Hebriana)』は、2021年10月下旬に初演が行われ、同年の年末まで上演が予定されています。ロバート氏は、今後数カ月は舞台『イェルマ(Yerma)』のツアー公演に同行する予定です。

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