LED照明に起因する周波数トラブルをデジタルマイクロホンで解決
コペンハーゲン・ビジネススクール(Copenhagen Business School、CBS)ではLED照明を導入した結果、マイクロホンの音声伝送にトラブルが発生。また、既存のマイクロホンシステムの帯域についても繰り返し問題が起きていました。
第一段階として、中小規模の教室にSpeechLine Digital Wirelessマイクロホンシステムを導入。さらに2020年末までに、すべての大教室のシステムをゼンハイザーのデジタル伝送テクノロジーに移行する計画です。
同校のAVマネージャーを務めるイェンス・ニールセン(Jens Nielsen)氏は今回のシステム移行プロジェクトについて、「イケアの店舗に行ったときのような感じでした。当初考えていたものとは、違う製品を購入する羽目になったのですから」と笑いながら語っています。ただし、この決断を後悔してはいないといい、SpeechLine Digital Wirelessのレシーバーを設置し、1本目のマイクロホンを取り出すなり、買ってよかったと思ったそうです。同氏はまず、標準的な帯域設定で表に出てみました。表でマイクを使って話してみると、音声はまったく問題なく教室に届きました。「コンクリートの壁を挟んで25メートル離れた教室です。手始めとしては上出来です」とニールセン氏は導入時の印象を評価。以来、スピーチに特化した世界初のワイヤレスマイクロホンであるSpeechLine Digital Wirelessは、コペンハーゲンのフレデリクスベア地区に位置するCBSのエキスパートらにその真価を認められてきました。プロジェクトの初期段階で、CBSはまず12セット(ハンドマイク、ヘッドセット、充電ステーション)を中小規模の教室向けに購入。その後の全校デジタル化プログラムでは2020年末をめどに、すべての大教室と講堂へのゼンハイザーのデジタルマイクロホンテクノロジーの導入を完了する見通しです。
21,000人以上の学生と1,500人の職員を擁し、名門として名高いCBSは、世界でわずか76校の「トリプルクラウン」認定ビジネススクールです。当然ながらCBSでは、近代的なインフラストラクチャは欠かせません。たとえば、学内のコンピュータは3年ごとにすべて最新モデルに交換しています。2012年には校内で最も大きい講堂(600座席)に、ゼンハイザーのワイヤレスマイクロホンを初めて導入しました。ワイヤレスマイク自体は他メーカーのものを以前から使っていましたが、長距離で信号が頻繁に途切れるトラブルがありました。マイクロホンレシーバーを講堂のラックではなく、別室に設置していたためです。ゼンハイザーのEW 300とEW 500は講堂でも問題なく運用できたので、この時点では別のシステムへの移行は見合わせることになりました。
一方、最大80人の学生が利用できる中小規模の教室では状況が異なりました。従来、これらの教室にはそもそも音声増幅システムがありませんでした。
その後、学生数が増えたことをきっかけとして、小教室でもワイヤレスマイクロホンを使うようになりました。新たな問題が発生したのは、小教室に調光可能なLED照明を設置してからです。「急に、アナログマイクで周波数トラブルに見舞われるようになりました」とニールセン氏は語ります。さらに、既存のグースネックマイクもきちんと作動しなくなりました。CBSではグースネックマイクとEWシリーズのワイヤレスマイクを統合しており、バッテリー容量がすぐに足りなくなってしまうのが原因です。ニールセン氏は地元で開催されたAVフェアを訪れ、グースネックマイクのワイヤレスソリューションを探すことにしました。
このAVフェアで新しいSpeechLine Digital Wirelessシリーズのデモを見たニールセン氏は、中規模の教室に理想的な製品だと考えました。また、現在のグースネックマイクとワイヤレスソリューションの組み合わせは、本来意図された製品の使い方ではなさそうだとの結論に至りました。結果として、フェア会場を後にするころには、当初とまったく違うアイデアが浮かんでいました。このアイデアを基にニールセン氏は、新しいグースネックマイクではなく、SpeechLine Digital Wirelessを購入。ワイヤレスグースネックマイクへの移行は、2018年の実施を計画しています。
CBSでは、従来のようにシステムインテグレーターのアテア社(Atea)を使うのではなく、校内のAVエキスパートがSpeechLine Digital Wirelessマイクホロンシステム×33の設置を行ったそうです。「操作がとても簡単で、製品はまったく問題なく稼働しています」とニールセン氏はコメント。また、伝送帯域も納得のいくもので、充電式バッテリーも日々の業務に使うのに十分だと高く評価しています。ただしバッテリーについては、仕様通り15時間稼働するのかどうかは未確認とのこと。同校ではマイクとレシーバーを使うたび、翌日まで充電しているためです。
ちなみにCBSでは、SpeechLine DWマイクロホン信号をエクストロン(Extron)製のコンパクトなデジタルミキサーで受信しており、これもアナログ製品と比べた場合のメリットの1つだとニールセン氏は指摘します。デジタルミキサーの利用は最小限なため、アナログシステムのようなハウリングを防ぐことができるそうです。
CBSでは現在、明確な計画がひとつあります。4つの建物すべての全教室をデジタル化するのと並行して、校内のマイクロホンシステムを時間をかけてSpeechLine DWに移行するという計画です。2018年には最も大きな講堂にLED照明と新しいマイクロホンセット×20を導入し、2020年までにはすべての講堂を100%デジタル化するそうです。ただし、このプロセスでもまた「イケア効果」が起こるかもしれません。